『人気セレクトショップ紹介』企画、英国流ラグジュアリーアイテムを取り扱う『BRITISH LUXURY BRAND GROUP (BLBG)株式会社』が運営するセレクトショップ『ヴァルカナイズ・ロンドン(VULCANIZE London)』へインタビューにお伺いしました。
今回インタビューを引き受けてくださったのはMD(マーチャンダイザー)兼バイヤーをご担当されている金子昌史さん。
本インタビューでは、バイヤーのお仕事やこだわり、セレクトショップ『ヴァルカナイズ・ロンドン』について金子さんよりお話頂きました。
前編に引き続き、
後編では、セレクトショップ『ヴァルカナイズ・ロンドン』のことやバイヤーのこだわりについてお伺いしました。
-続いて、ヴァルカナイズ・ロンドンについてご紹介をお願いします。
金子)
ヴァルカナイズ・ロンドンは来年で10周年を迎えます。
現在ヴァルカナイズ・ロンドン5店舗を運営しておりまして、東京は青山と銀座、大阪、心橋、名古屋、札幌にございます。
先程もお話しましたが、英国ブランドのみを取り扱っています。
ヴァルカナイズ・ロンドンの強いこだわりとしては、取り扱いアイテムの
100%を買い付けだけでやっているところです。
近年、100%買い付けだけでやっているセレクトショップはほとんどありません。
オリジナル商品を作っているセレクトショップさんが多いですよね。
-なぜオリジナル商品は作らないのですか?
金子)
それを一切やらないというのはヴァルカナイズ・ロンドンのこだわりですね。
オリジナル商品はその時代のニーズにマッチしたアイテムを提案することが出来て良いのですが、"今"のロンドンで愛される本物ではないからです。
長続きしないし、ヴァルガナイズ・ロンドンのコンセプトとずれてしまいます。
-(ヴァルカナイズ・ロンドンで)本物を作るというのは?
金子)
それはしません。
ブランドとコラボレーションして、別注アイテムを作ることはありますが、それはブランドのヒストリーを踏まえた上で慎重に進めます。
本物が好きなお客さまが多いので、そういうお客さまの期待を裏切ることはできません。
本物を持つと気分が変わると思うんですよ。
大切なシャツやスーツ、傘を買って一生涯大切に付き合っていける商品を持てるとしたら、
そのものに愛着が湧くし、人生が豊かになりますよね。
(例えば、フォックス・アンブレラは、)持ち手から下は全部パーツが分かれていて、
細かくリペアができるようになっていて150年からほとんど構造も変わっていないので、150年前のものもリペアできるんですよ。
-これまでに印象に残った仕事はありますか?
金子)
そうですね、バイヤー目線で考えると、ヴァルカナイズ・ロンドンだけのコラボレーション企画を様々なブランドを持ちかけて、それが実現できたときはすごく嬉しいですね。
(コラボレーション企画の)商品を作るときはパワーも特別に使います。
商品として実現したときに1回目の喜びがあり、お客さまの手に届き、買って喜んで頂いたときは2回目の喜びがあります。
販売のクルーが自分も欲しいと絶賛と反響が返ってくる商品というのは間違いなく売れる、絶対売れるアイテムです。
そういった意味では、販売クルーを商品のファンにすることは、バイヤーにとってとっても大事な仕事だと思いますね。
買い付けた商品を「誰が一番見るんだ?」ってなりますよね。
もちろん店舗のクルーなんですが、彼らに欲しいとなってもらい、ファンになってもらわないと実際にお客さまにご購入いただけません。
店舗のクルーがご興味をもっていなかったら、クルーの商品に対する愛情がお客様に伝わるとお客さまにも理解していただけます。
伝言じゃないですけど、ガチっとはまったときの達成感は大きいですよ。
-バイヤーのお仕事で苦労することは?
金子)
発注するまでに時間がかかります。
地道な作業、数量や金額など、適正な発注金額をはじき出すのが一番大事だと思います。
-長年の経験ですか?
金子)
経験も大切ですが、毎シーズン移り変わるトレンドも調べないといけませんし、地域による特性も把握していなければいけません。
販売する地域によって売れるものも全然違いますし。
我々のような買い付け100%のブランドはコレクションによって大きく左右されることも大きいのです。
昨シーズンはコレクションが良かったのに、今季のコレクションは全然良くなかったってことがあるので。
バイイングの予算を出張中に組み替えていくことが結構多いですよ。
昼間は展示会を回って、帰ってホテルでオーダー作業をやっています。
海外出張に行くとびっくりするくらい歩くんですよ。
回りきれないくらい。
10kmくらい歩くことも多いです。
-バイヤーになるための資質は何だと思いますか?
金子)
コミュニケーション能力ですかね。
ブランドやメーカー、社内、販売クルーに対しても。
一人では買い付けできないので、いかに協力してもらうかが大切だと思いますね。
英国にも買い付けのパートナーがいてイギリスのブランドとやり取りをするんですが、パートナーとのコミュニケーションをかなりとっています。
-今後の消費トレンドは?
金子)
大きなスパンで考えると、中途半端な物は淘汰されていくと思います。
-中途半端な物とは?
金子)
ファストファッションは市場に定着しましたし、きっちりとした物づくりをしている本物のブランドはこれからも支持されると思います。
それらの中間のブランドが厳しいと。
ヴァルカナイズ・ロンドンは本物、ちゃんとものづくりをしているブランドを
今後も展開していきます。
-今後のカラートレンドは?
金子)
毎シーズン、カラーのトレンドはありますけど、基本的にはそこまでは変わらないと思います。
ヴァルカナイズ・ロンドンでは定番商品が多いっていうのもあるんですけど、あまり時代に左右されない。あまり意識していないですよね。
定番を展開しつつ、ロンドンでホットなブランドを日本のお客さまにお伝えできるようにしていきたいと思っています。
-最後に、金子さんご自身もしくはヴァルカナイズ・ロンドンとしてチャレンジしていきたいこと?
金子)
まだまだ知られていないイギリスのブランドはたくさんあります。
今年4回くらいロンドンへ行くのですが、新たな発見ばかりです。
チャレンジしていきたいことは、しっかり準備をして、ヴァルガナイズ・ロンドンにしかできないブランドやアイテムを日本で展開していきたいと考えています。
また、商品をお客さまに紹介するだけじゃつまらないので、英国ブランドのデザイナーなどにも(日本に)来て本場の空気感を体感してもらえるようなイベントも開催したいです。
一緒に取り組んでやってよかった、面白かったね、ということを続けていきたいです。
—本日はありがとうございました!
最後に
今回ヴァルカナイズ・ロンドンの金子昌史さんへのインタビューを連載させていただき、バイヤーとしてのご経歴、こだわりや店舗運営に関してお伺いしました。
インタビューを通じて、顧客視点を徹底し、金子さんご自身が楽しく、そしてお客様に喜んでもらうというスタンスが印象的で素敵でした。
また、今回のインタビューの中で、
・英国ブランドへのこだわり
・多店舗展開せず店舗数の集約
・オリジナルブランドを作らない
・100%買い付けのみ
などのお話から人気セレクトショップ「ヴァルカナイズ・ロンドン」がお客さまから選ばれ続ける理由や戦略的な店舗運営方法を垣間見ることができました。
改めてとなりますが、インタビューのご機会をありがとうございました。
▼【ヴァルカナイズ・ロンドン/金子昌史氏インタビュー前編】「お客さまと商品と店舗の繋ぎ役がバイヤーの仕事だと思っています」 ▼
https://fashonablecormorants.com/shop/interview-vulcanizelondon-1/
▼ヴァルカナイズ・ロンドンのHP▼
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取材・文/田中 撮影/桜井